左バッターに転向して打率3割を超える方法

20歳で左バッターに転向して成功した経験から、その戦略やコツ、練習方法やバッティングフォームについてまとめました。

松井稼頭夫選手から学ぶスイッチヒッター転向成功の秘訣

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PL学園→西武ライオンズ→ニューヨックメッツなどメジャーを経験→楽天ゴールデンイーグルスという経歴のショートストッパー松井稼頭夫選手。走攻守そろった名選手の一人だが、プロ野球入団後にスイッチヒッターに転向という異色の経歴をもっている。

僕自身も、20歳の時に左バッターに転向した経験があり、スイッチヒッター転向成功の秘訣を、その経験も踏まえてまとめたいと思う。スイッチヒッター、もしくは左打者転向を狙っている野球少年の参考になれば幸いだ。

3000安打の向こう側

3000安打の向こう側

Posted with Amakuri at 2018.8.5

  • 松井 稼頭央
  • ベースボールマガジン社

 

3000本安打の向こう側』松井稼頭夫(ベースボールマガジン社)

左バッター挑戦へのきっかけ

松井選手がスイッチヒッターに転向したのは入団2年目の1995(当時松井選手は20)。当時の打撃コーチの谷沢健一さんに、右打席のバッティングフォーム強制のために「左で打ってみなさい」と言われたことがきっかけだったという。

僕は右でスイングする時に、上半身が投手方向へ突っ込むことがクセになっていたのですが、谷沢さんはその原因が、右半身の力が左阪神に比べて強すぎするからではないかと考えたのです。つまり、谷沢さんは左打席でスイングさせて、右半身を鍛えれば左右の体のバランスがとれて打撃フォームが強制できると。そこで僕に左打ちを勧めたのです。

そんな状況で挑戦した左打席だったが、周囲から「スイングがいい」と評判になり、はじめてのシート打撃でヒットを打つことができた。そこから、松井選手のスイッチヒッターへの挑戦が始まったという。

松井選手の場合は、コーチの言葉がきっかけとなったようだが、左バッターには様々なメリットがある。

左打者の、右打者との比較で挙げられるのは「右打席に比べて一塁まで1メートルくらい近いこと」、「左打者はスイングと同じ方向に走り出せるが、右打者は腰の回転と逆方向には走り出すことになる」、「右投げのピッチャーが多いので、左打席だと球筋が見えやすい」などといったことです。

特に、1・2点目は大きい。自分の場合も、ずば抜けて足が速かったわけではないが、かなり内野安打を量産できるようになったのを覚えている。超俊足の松井選手であればこのメリットは尚更大きかったはず。

左打席でとにかくボールを見る

松井選手は、左打席でとにかくボールを見る練習をしていた。内角の膝下のボールに恐怖心をもっていたという松井選手は、防具をつけて、あえて内角ギリギリのボールを投げてもらい、時にはボールに当たりながらたくさん左打席でボールを見る練習をしていたようだ。

僕の場合は、そこまではできていなかったが、毎日バントの練習をすることでたくさんボールを見るようにしていた。その結果、右打席で立つのと同じようにボールが見えるようになった。

 

右打ちは、小さい頃から慣れ親しんでいて本能だけで打てるもの、という意識があった一方で、左打ちは練習を積み重ねていきながら、つくられていくものだと考えていましたから、1球でも多く投げてもらって、右打席と同じような目線でボールを見極めていくことに腐心していました。

右打ちを逃げ道にしない

僕自身は、スイッチヒッターではなく、左バッターに完全に転向した。そして個人的にはスイッチヒッターはおすすめできない。なぜなら、右打席が逃げ道になることもあり得るからだ。「自分は左バッターとして生きていくんだ」という覚悟が必要だと考えている。

松井選手はその点、スイッチヒッターとして大成されているわけだが、それでも同じような思想はお持ちだったようだ。

「右で打ってダメなら左で打てばいい」、「左でダメなら右で打とう」と逃げ道をつくることだけはしないようにと、僕自身は心がけていました。右は右、左は左での打法を完成させなければならない。

 逃げ道になるということに加えて、スイッチヒッターになるということは、それだけ必要な練習量も格段に上がる。

さらにスイッチヒッターに取り組み始めた当初コーチから「人の倍以上は練習しないと、ライバルたちに追いつき、追い越せないぞ」とことあるごとに言われ、僕もその言葉通りに練習に励んでいたのですが、ここで間違えてはいけないことがあります。それは、慣れない左打ちの練習を多くしても、右打ちの練習を減らすようなことをしてはいけないということです。(中略)右打者の人がスイッチヒッターに取り組んだ際、左で1時間スイングしたら、右も1時間行うようにしなければなりません。左の1時間に対して、右が20分のみ、というのは誤った捉え方です。「スイッチヒッターは人の倍、練習する」ということばは、左、右問わず同じ練習量をこなすことから生まれた言葉だと僕は考え、それを念頭に置きながら、日ごろから左右分け隔てなくバットを振り続けています。

 したがって、単なる左バッターへの転向よりも、スイッチヒッターのほうが難度はかなり上がるといえる。右打席の打撃がそれほど良いわけではないのであれば、思い切って右打席は捨て、左打席に集中するという選択肢は全然ありだと思うのだ。