野球とゴルフは、特に結果が精神状態に左右されるスポーツと言われている。僕は学生時代、13年間野球に打ち込んだが、自分がプレッシャーに弱いということを認識していたので、メンタルトレーニングを学んだ。そこで学んだ「自分の気持ちをコントロールする技術」は今の仕事でも活きている。
自分の気持ちをコントロールする15のルール
まずは、大学時代、野球部に所属していた時、当時試合前に必ず読み上げていた15のルールをご紹介したい。
・人の体は、直前に描いたイメージ通りのことをする。
・積極的な考えを持つ。「◎~しよう」「×~してはだめだ」
・次のプレーを冷静に考え、予想・イメージする。
・リラックスするには、ストレッチと深呼吸をすること。
・落ち着いた呼吸と声で積極的な独り言を口に出す。
・失敗した時:言い訳しない。すべては自分の責任。原因をよく考え、何かを学びとる。
・成功した時:どうして成功したのかをよく考え、自信につなげる。
・注意力は、過去ではなく現在に向けられるべき
・自分のイメージ・プライドを守ろうとすると、周囲の目が気になり、集中力が低下する。
・周りの人は、公正に自分を評価してくれるとは限らない。周囲の期待はシャットアウトする。
・周到な準備 →自信 →集中
・プレッシャーとは状況や環境が生み出すのではなく、自分の想像力が勝手に生み出すものである。
・すべては小さいことだ。
・野球をできること自体に感謝する。
・ボールをよく見て、打ちたい打球をイメージする!
この15のルールは、野球というスポーツのためのものだが、エッセンスは他のスポーツでも仕事でも同じことが言える。それらを少しまとめてみたい。
野球の精神論から学んだこと
スランプは自分の「想像」から生まれる
野球はとても精神状態に結果が左右されやすいスポーツだ。野球に限らず「スランプ」という言葉があるように、なんらか失敗をきっかけに、負の連鎖に陥ってしまうことが誰にでもある。しかし、このスランプは、周りの環境や状況が原因ではない。「また失敗したらどうしよう」「次失敗したらあの人の評価が落ちるかもしれない」「絶対に結果を出さなきゃだめだ」そんな自分自身の「想像」によって、スランプはもたらされている。
これは仕事でも同じ。「もう失敗できない」「あの人の評価が気になる」と自分であれこれ想像することで、気持ちが落ち込み、今の仕事に前向きに取り組めなくなってしまうのだ。
想像は過度な「自意識」から生まれる
では、どうすれば良いのか。スランプは自分自身の「想像」によってもたらされると書いたが、僕はスランプは過度な自意識からくると思っている。
やってしまった失敗を思い出す。コーチや上司に言われた厳しい言葉を思い出す。次に失敗したら周りにこう見られるのではないかと考える。こういった「自分が周りにどう見られているか」ということを想像してしまうからこそ、そればかりが気になって目の前の状況に集中できなくなる。
過去や未来にいくら思いを馳せても何も変わらないということを何度も自分に言い聞かせ、とにかく「今」に集中しよう。人の集中力は限られている。過去や未来に分散するほどの余裕はだれにもないはずなのだ。大丈夫。あなたが思っているほど、周りの人はあなただけに注目はしていない。
肯定的な行動ベースで考える
「今」の状況に集中するにはどうしたら良いのだろうか。それは、行動ベースで物事を考えるということだ。例えば、野球の試合中、チャンスで打席が回ってきたとしよう。ここで考えるべきことは「ここでヒットを打ってやる!」だろうか。「ヒットを打ったら監督に褒められるかもしれない」だろうか。「今日はヒットを打ってないからここで何としても結果を残さないとまずい」だろうか。
結果に思いを巡らせるということはわかるはずのない「未来」に思いを巡らせるということだ。自分がコントロールできるのは「今」しかない。今に全集中力を捧げるには、今「何をすべきか」を考えることだ。この場合だと、「次の球は外角のストレートにしぼってフルスイングしよう」「カーブはタイミングが合わせやすいから全球カーブにヤマをはろう」などだ。
失敗のあとも同じことが言える。エラーのあとに「こうすればよかった!」、三振のあとに「ああすればよかった!」と考えても意味はない。仕事でも失敗した後に後悔することは何のメリットも生まないのだ。
ただし、振り返ることは重要だ。でもそれは今の行動に活かすための振り返りである。
「さっきの打席はグリップが下がっていたから三振したんだ。今回はグリップを上げて集中しよう」「前回のプレゼンは相手の意図を読み取れていなかったから失敗した。だから次の会議は相手の意図を考えて資料を作ろう」のような感じ。そうすれば負の連鎖が起こってスランプに陥ることはないだろう。
肯定的な言葉を口に出す・紙に書く
ここまで読んだ方で「まあそれは頭ではわかるけど…」と思われた方も多いかもしれない。全くその通りで、頭ではわかっていてもなかなか行動に移せないのが人間だ。
その時に有効なのが「口に出す」「紙に書く」ということ。例えば野球なら「次の球は外角のストレートにしぼってフルスイングしよう」「自分のところにゴロが来たらセカンドに送球だ」などと小声で声に出してみることだ。バカらしいと思えるかもしれないが、これは大変効果がある。僕自身、よく球場内でブツブツ言っていた(他の人に聞こえてしまうと気持ち悪いかもしれないが…)。
仕事でも同じ。ある会議で自分の企画がボコボコにされて落ち込んだ時のこと。そんな時「自分の良さは最初からクオリティの高いものを生み出すことではなく、人の意見を聞いて粘り強く企画をブラッシュアップしていけることだ」と紙に書いたことがあった。そうすることで、気持ちが落ち着き、肯定的な気持ちで仕事に取り組むことができた。結果、次の会議は上手くいったのだ。
このように、自分の気持ちをコントロールするには、頭の中でいろいろと考えるだけではなく、口に出したり書いたりアウトプットすることが非常に重要。そうすれば自ずと結果もついてくる。
まとめ
野球も仕事も過去や未来を想像しない/肯定的な行動ベースで考える/肯定的な言葉を口に出し、紙に書くこと。参考図書はこちら。
「野球のメンタルトレーニング」ハーベイ・A・ドルフマン,カール キュール(1993年 大修館書店)